渡る世間に鬼はない実体験です

これは、私が学生時代のお話です。
このエピソードがあってから早数年経過しますが、今でもこのことを思い出すだけで非常に冷や冷やします。

ある日、私は、通学定期を購入するため、財布の中に数万円のお金を所持していました。
購入する前、自宅で何度も定期券代がちゃんとあるかどうかを確認した後、出かけました。
当時の平均所持金が数千円だった私にとって、大金を持ち歩くことは、一つのビックイベントだったので、1万円札を数枚財布に入れていたのでかなり有頂天になっていました。
ところが、駅に到着し、いざ定期券を購入しようと思ったときにアクシデントは起きました。何と、定期券代を入れていた財布をどこかに落としてしまったのです。
そのときは、とても焦り、「嘘だろう」と思い、ポケットやカバンの中に財布があるかどうかを何度も何度も探しました。
しかし、探せど探せど財布は見つからず、私の体は、フリーズしてしまい数秒間動くことができませんでした。
その後、体は動けるようになり、少し冷静に考えて、私は、まず駅員に財布の落し物はないか聞きました。しかし、届いていないといわれ、駅員に「交番にも行ってみた方がいい、もしかしたら届いているかもしれない」と言われたので、交番に向かいました。
交番に到着し、同じように聞いてみたら返答は全く同じでしたので、遺失届を出して届くことを祈りました。
その後、自分で自宅から駅まで歩いたルートに財布が落ちていないか数往復探しましたが、結果は変わりませんでした。
落とした物が財布で、しかも大金が入っていたのできれいに戻ってくる可能性は低いと頭の中では分かっていたのですが、心の中ではしっかり見つかってほしいと強く願っていました。

駅や交番へ確認、届の提出をし、自分でも一通り探した後、家に帰る足取りは非常に重く、これほど家に帰りたくないと思ったことはありませんでした。
帰宅後、定期券代を落としてしまったことを両親に正直に言うべきか言わざるべきか最初はとても悩みました。ですが、自分の中でモヤモヤするし黙っていても何の解決にならないと思い話すことにしました。両親からは、「それは、仕方なかったね、見つかるといいね」と言われ一時的に不安が解消されたのと同時に親の愛情を感じました。

それから、財布を落としてから数日間、そのことばかり考えてしまい心ここにあらずになってしまい、他のことは全く手つかずでした。
なくしてから一週間が経過して、もうだめだと諦めかけていたときに、突然私の携帯電話が鳴りました。「○○警察署ですが、お探しの財布が届きましたので取りに来てください」
その話を聞いた瞬間一安心しました。しかし、私の中で新たな不安が発生しました。「財布が見つかったのはいいけど中の現金はどうなったのだろうか?」恐る恐る聞いてみたら、「中身も問題なく届いていますよ」という言葉を聞いてほっとしました。大金を落としても自分の懐に入れずしっかり交番に届けてくれる親切な人もいるんだなと思いとても感動しました。
私は、一目散に財布を取りに警察署へ向かいました。到着したら、手続きを行った後で中身の確認をしました。改めて実物を手に取ったときのあの感覚は、忘れられませんでした。
その後、警察署の担当の方に届けた人のことについて聞きました。
届けた人からは、お礼金は辞退するということを聞いたのでお礼の連絡をするために連絡先を教えてもらい、落ち着いたらお礼の連絡をしようと考えました。
警察署を出た後、私は、財布をしっかり手に持った状態で駅に向かい定期券を購入しました。購入できた瞬間、「やっと購入できた」、「これなら落ち着いて物事に取り組める」と思いかなり安心しました。

購入後すぐに自宅に帰ったら、財布を拾ってくれた方にお礼の連絡をしました。
その時は、無事に受け取りが完了したことと、財布を拾って届けてくれたことへの感謝の気持ちを丁寧に伝えました。
届けてくれた方からは、「落とし主にちゃんと届いて良かった」、「今回は、運が良かったね。ただ、落としたものを届けてくれない人も中にはいるからこれからは気を付けて」と言われまた感動しました。

このエピソードがあってから私は改めて落とし物を拾った際は、どんなに小さなものでも絶対交番に届けようと心に決めました。

落とし物だからいいやと思って拾ったものを自分の物にしたり、売却する悪いことを考えている人も世の中にいるかもしれません。
この行為は、刑法第235条の窃盗罪もしくは刑法第254条の拾得物横領罪のいずれかの罪に問われ、窃盗罪の場合は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金、拾得物横領罪の場合は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料の刑罰になります。
もし、あなたもこのように落とし物を拾った際は、できるだけ早く近くの交番に届けるようにしてください。落とした人は、絶対に困っています。